315形さよなら運転

国鉄民営化から25年、また1つ"旧型国電"が姿を消す。


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クロスレール(TfLレール)の地上区間に残っていたクラス315電車のさよなら運転が、明日実施されます。同形は1980-81年に4連61本が製造され、主にリバプールストリート駅を発着する近距離列車に使用されてきました。末期はグレート・イースタン本線の緩行線を、2本併結した8両編成で各駅停車として走っていました。現在は朝夕ラッシュ時に細々と走るのみで、さよなら運転後も暫くは残留し、12月9日までは運用に就く可能性があるとのことです(但し全国規模で頻発しているストライキの影響を受けるかもしれません)。


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何故わざわざブログでこの車両を取り上げたかと言うと、個人的にTfLレールの白に青帯の塗装が好みだったからです。315形はオーバーグラウンドでも2020年まで運行されていましたが、オレンジが入った塗装はさほど好みではなく、4本いた更新車は個人的に英国で最も嫌いな前面デザインでした。


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TfLレールの315形は、Shenfieldまでの通勤路線で使用され、かなり治安の悪い地域も走ります。沿線に観光地がほぼ皆無ということもあり、よくお世話になったという人は多くないと思います。新鋭クラス345電車が2017年から投入されたことで、315形は徐々に置き換えられました。今年5月のエリザベス線暫定開業によって、TfLレールは「クロスレール」に発展的解消したのですが、意外なことに315形は少数ながら残存しました。


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しかし、エリザベス線の直通運転が計画よりやや遅れて始まるのに合わせて、ラッシュ時間帯に細々と走っていた315形も遂にお役御免。これにより、クロスレールはようやく345形に統一され、315形は42年の歴史に幕を下ろすことになりました。相変わらず鉄道車両なら何でも保存したがる国ゆえに、こんなマイナーな電車にも引き取り先が見つかったそうです。



さて、2020年のコロナ禍以降にロンドンから姿を消した国鉄電車を列挙すると、結構な数になることに気づきました。

クラス運行会社引退年月
 317 LO 2020年4月 
 315 LO 2020年10月 
 365 GN 2021年5月 
 456 SW 2022年1月 
 455 SN 2022年5月 
 317 LE 2022年7月 
 322 LE 2022年8月 
315XR2022年11月

来年もロンドンに現役で残るのは、私が間違っていなければ、クラス455(South Western Railway)、クラス321(Greater Anglia)、クラス465・466(Southeastern)の4形式でしょうか。恐らく概ねこの順番で姿を消すのではないかと個人的には予想しています。465・466形は2020年代後半まで残るかもしれませんが、ラインナップはかなり寂しくなった印象を受けますね。

テーマ : 鉄道
ジャンル : サブカル

旧型国電、また1つ去る

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民営化後も長らく通勤・中距離列車を支えてきた国鉄形車両。しかし最近は、老朽化に加えてコロナ禍による需要減少に伴い、首都圏における吊り掛け駆動の「旧型国電」は急速に勢力を縮小。先日も更にもう1車種の引退が明らかになりました。

今週火曜日、グレーター・アングリア社は、主にロンドンとケンブリッジ方面を結ぶ中距離列車に使用していたクラス317電車(以下「317系」)の引退を発表しました。317系は40年以上に渡って一貫して東部地方で運行され、スタンステッド空港直通列車に使用されたこともありました。しかし、近年は新鋭クラス710及びクラス720電車への置き換えが進み、徐々に活躍の場は失われていました。同社によれば、明日をもって運転を終了するとのことです。

この車両、イギリスの鉄道史に残るほどの名車では全然なく、運用範囲が比較的狭いことから地味な存在でした。しかし私にとっては、昔ケンブリッジに住んでいたこともあって、思い入れのある車両です。そこで、今回は少しばかりこの電車を振り返りたいと思います。


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1981-82年に製造されたグループ(言わば「前期車」)は、前面上部のラッパ状の器具(警笛)と5つの前照灯及び尾灯、そして側扉の小さい窓が特徴的。このグループが最大派閥であったと記憶しています。こちらはGreater Anglia社の車両ですが、水色の扉はThameslink時代の名残です。

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London Overgroundの運用に就く前期車。317系はウェスト・アングリア本線及び近隣の支線を40年以上走り続けました。趣味的には特筆すべき特徴もなく、私以外に写真を撮っている人はほとんど見かけなかった印象で、まさに縁の下の力持ちといったところでしょうか。

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こちらは更新車。スタンステッド・エクスプレス用に2000年から一部の編成が改造されました。2012年に空港アクセスから退き、2020年にはOvergroundからも撤退。但し、その後も車両不足を補うため、一部がケンブリッジ方面の列車を代走したことがありました。

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1985-87年に製造された後期車は、前照灯の形状を中心に外観が変わっており、個人的にはこちらの方が好みでした。一番外側にある縦型のライトが、京急などでお馴染みの急行灯を彷彿とさせます。このデザインはクラス455電車などでも見受けられますが、317系の場合は太いケーブルがゴチャゴチャしていないためスッキリしています。

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古い写真を引っ張り出しまして、2002年にキングス・クロスでの1枚。小学生がコンデジで撮ったものですから、手振れや低画質等残念な点が多いですが、前期車と後期車の並びです。そういえば、この頃は行先表示も幕式でしたね。

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2003年に撮影した、ケンブリッジ駅に停車中の後期車。ちなみに当時の私は、吊り掛け駆動という名前は知らずとも「苦しそうな音を出す古い電車」という認識はありまして、江ノ電や箱根登山鉄道のイメージでした。それが、この国では時速160キロの高速運転をするので、途中で電車が空中分解しないか怖くなった記憶があります。


イギリスに限らずヨーロッパあるあるですが、この線区でも新車の調整にやたら時間がかかり、旧型車両の置き換えが年単位で遅れていましたが、ようやく317系は引退。よく考えると、クラス313は2019年にロンドンから消滅したほか、クラス455もSouthern社のものは引退したし、South Western Railway社の車両も離脱までカウントダウン。南西部方面のクラス442に至っては、多額の金を注ぎ込んでリニューアルして1年足らずでコロナ禍により全車廃車の憂き目に。客車列車共々、僅か3年足らずでロンドンを走る列車の顔ぶれはかなり変わってしまったようです。

迷惑鉄オタは万国共通?―手動ドアの終焉

鉄道オタクによる迷惑行為は、ここ10年余りの間に何度もメディアで非難されてきました。最近では西川口駅で暴行事件に発展したり、高尾駅の西にある小名路踏切で庭木が伐採されたりと、ニュースで幾つか事件が取り上げられました。個人的には、犯罪行為に発展した点を遺憾に思いつつ、「なぜその列車を今更その場所で撮ろうと思ったのか?」ということに首を傾げたくもなるのですが、ここでこれ以上批評することは控えておくことにします。

ファインダーを覗くと色々な意味で視野が狭くなるというのは、日本に限った話ではありません。鉄道発祥の国でも、日本でお馴染みの荒れ模様が観測されたようです。

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今週はEast Midlands Railwayのインターシティ125が引退の時を迎えるということで、ロックダウン緩和も相まって各地で大賑わいのようです。ミッドランド本線では約38年活躍しましたが、コービー支線の電化及びそれに伴う車両の転配より、往年の名車インターシティ125は遂にロンドン発着列車から全て撤退となります。

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EMR社のインターシティは、昔ながらの手動ドアが残るマーク3客車を使用しています。イギリスで長距離列車に乗った方はご存知かと思いますが、列車から降りる際は窓を開けて身を乗り出し、ハンドルを引いて自力で扉を開ける必要があります。この国では、2010年代後半に至るまで全国にこのような前近代的な構造が残っていたのであります。しかし、2020年までにほぼ全滅し、定期運用に残るのはEMRの車両が最後となっていました。

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さて、ミッドランド本線からインターシティ125が撤退し、手動ドアの客車が姿を消すということで、お名残り乗車をする者や最後の姿を追いかける撮影者で各地は混雑しているようです。そこで問題になるのが一部の迷惑オタクの存在。私がツイッターで見た限りでも、黄色い線を大きく越えるのはもちろん、閉鎖され立入禁止になっているホームでカメラを構えたり、線路内で堂々と写真を撮る者が散見され、日本でもお馴染みの光景がそこでも繰り広げられています。


更に、例の手動ドアで遊ぶ者も一人や二人ではない模様。走行中の列車から手や顔を出して写真を撮ったり、他の撮影者の妨害をする姿を写した写真が、既にツイッターで幾つか出回っています。インターシティ125は最高速度200キロで、一応ドアにはロックがかかっているとはいえ危険な行為であることは想像に難くありません。また、お名残り乗車組が車内を占拠して、実質的に他の乗客が乗れなくなることも懸念されているようです。

そんなこともあり、去る日曜日には運行会社がインターシティ125を走らせるのを危険と判断し、クラス222気動車に急遽差し替えるという事態にまで発展しました(当該ツイートは個人に対してのリプライなので、ここでは引用しないでおきますが、興味のある方は探してみて下さい)。当初の予定では明日15日をもって運行を終了することになっていますが、無事に終わることを祈りたいと思います。

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イギリスは最近こそワクチン接種が進んだことで落ち着きを取り戻しつつありますが、全体を見ると新型コロナウイルス感染症の影響が日本の比ではないほど深刻で、厳しく長いロックダウンと夥しい死者によって国民はかなり疲弊しています。今回の一連の騒ぎは、その反動もあるのだと見て間違いないでしょう。しかし、蒸気機関車が走る時を除いて基本的に日本より大人しい当地の鉄道ファンたちが、一部とはいえ年々過激さを増しているところを見ると、日本のようにイベントの中止や情報非公開化が進みそうな気がします。停車中の列車の運転台を見せてもらえるような、ふた昔前の日本のような光景は、イギリスからも遠くないうちに失われるのかもしれません。

ロンドンから南東部への通勤電車

昨年撮った写真を見返してみたところ、ブログに上げそびれていたものがチラホラあることに気づきましたので、今更ながら落穂拾いと致します。今回のテーマは、ロンドンと南東部ケントなどを結ぶ通勤電車です。

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ここで取り上げるのは、2004-05年に製造されたクラス376電車。ボンバルディアが1999-2017年に各地へ投入した電車7形式(エレクトロスター・シリーズ)の1つで、5連36本180両が製造されましたが、これはスタンステッド空港発着列車に投入されたクラス379電車に次いで2番目に少ない数です。クラス375電車をベースとしていますが、通勤電車ということでトイレと冷房は無く、分割併合運用が無いことから前面は非貫通となっています。
ロンドンのCharing CrossやCannon StreetからDartfordやHayesを結ぶ列車の他、当エリアの循環線を走る各駅停車を中心に運用されており、ロンドンでは2本繋げた10両編成を組むのが主となっています。

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この車両、個人的にはかなり撮影に苦労した車両でした。例によって障害物がなく太陽がきちんと当たった写真を撮りたかったのですが、まず撮影地を探り当てるのが大変でした。ロンドン南部や南東部はぶっちゃけ評判のよろしくない土地ということもあり、ほとんど馴染みが無いからというのが最大の理由です。
クラス376はそもそも在籍数が少ない上に、固定運用とはいえ循環線のどちら側を回るのか把握が簡単ではないというのもネックでした。この循環線というのはちょっと曲者でして、(いつもの)遅延により駅の発車案内は更新が追い付かず、車両の行先案内表示は消灯していて、どの列車がどこに行くのかさっぱり五里霧中というのも日常茶飯事。自分の意図とは全く違う駅に連れて行かれたこともありました。

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この地域ではクラス465あるいは466電車が圧倒的に多く、8両編成がメインかと思いきや、4+4+2で10両編成を組むこともあるため、発車案内の編成両数から運用を識別するのも容易ではありませんでした。これらの国鉄形電車も決して悪くは無いのですが、さすがに少々飽き飽きしたのを覚えています。
クラス376は別にラッシュ時のみの運用というわけでも無かったのに、予想外に手間がかかってしまい、ようやく1枚撮れた時はやれやれと首を振ったことも覚えています。

そもそもCharing CrossとCannon Streetという、ロンドンではかなり影の薄いターミナル駅を発着している時点で、地味な電車の印象を拭えないクラス376。しかし、あの国にしては珍しく投入から20年近く塗装が変わっていない(つまり原型をほぼ保っている)ので、ちょっと関心があったのです。もうこの電車を見る機会は無いと思うので、とりあえずまずまずの記録が出来て一安心でした。

ロンドン近郊やユーロスターの撮影地リスト+α

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新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている現在、私も多くの方々と同じく外出できない日々が続いています。そんな中何かないかと探してみたところ、だいぶ前にロンドン近郊の鉄道写真撮影地をまとめていたことを思い出しました。

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イギリスには最新鋭の特急形から保存車両に至るまで、魅力的な被写体が多く走っておりますが、撮影地に関する情報は日本と比較するとかなり少ないのが現状です。これは言語の壁が問題なのではなく、在英鉄道ファンのうち99.9%は写真の撮り方を全く理解していないからです。
イギリス在住の撮り鉄が撮影する写真は、逆光やどんより曇った汚ならしい写真はもちろん、編成の後ろ半分が構図からはみ出していたり、車体に障害物がグサグサ刺さっていたりするものも嬉々としてアップしており、完全に救いようのない状態となっております。ごく稀にきちんとした写真があると思って見てみれば、日本から休暇で遊びに来たファンだった…というのがお決まりのパターン。

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ロンドンに1年余り住み、結局撮影地はゼロから自分の足で探さなければいけないということを悟り、順光の編成写真コツコツと撮り溜めました。で、自己満足の目録ではありますが、「KHKQの順光撮影地備忘録」と名付けてアップロードしてみました。「順光」と言いながらチラホラ地下区間が入っているのはご愛敬。どれだけの需要があるかは分かりませんが、日本からの鉄道ファンでロンドン近郊の電車をオーソドックスな方法で撮りたい方にとって、少しは役に立つのではないかと思っています。

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ちなみにこの備忘録、実は帰国直前にまとめてアップしていたのですが、何故今までブログに載せなかったかというと、ホームページを立ち上げてそちらで紹介する計画があったからです。しかし、思った以上に面倒くさく時間が取れず、年度が明けた今頃になって思い出した次第です。
最近はずっと在宅でやることも少なくなっており、ホームページ作成に手を出そうかと考えていますので、いずれは撮影地リストも載せることが出来るかと思います…たぶん。

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そういえば1年足らずで数百枚集めた郵便ポストの写真も有効活用したいなぁ…せっかくエドワード8世の分も何枚かあるんだし。これもホームページのネタに出来ないかなぁ…。
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