COVID-19 crisis

Table Covid-19
新型コロナウイルスCOVID-19の世界的な感染拡大が続いています。中国・韓国の発表によれば、両国の新規感染者の数が減少に転じ、日本も厚生労働省が「何とか持ちこたえている」という見解を発表。他方で欧州における爆発的な患者数の増加には一向に歯止めのかかる気配がなく、イタリアでは感染者数も死者数も急増の一途。ドイツ・フランス・スペイン・アメリカでも感染者数は既に4桁を突破しました。

2月まで、日本は中国に次いで世界で2番目に感染者が多い国でした。ダイヤモンドプリンセス号の検疫が功を奏するどころか火に油を注ぐ結果となり、世界中から非難を浴びました。現在でも、検査件数が少ないことを批判する声が一部の国・メディアから聞かれます。もっとも、これには賛否両論あるようで、医者ではない私には分かりかねます。
しかしながら、イタリアを中心とする西洋諸国での蔓延ぶりを見ると、あちらの国々は東洋での感染拡大を漫然と眺めるのみで、結果的に有効な対策を講じなかったことの報いを受けているのだと言って良いのではないでしょうか。医療制度の違い等もあり一概には言えませんが、政府や関係機関のみ限らず一般市民の意識が低いことが、今回の惨事に拍車をかけているのは間違いないでしょう。

さて、私は7月頭に行なわれる予定の学位記授与式に向けて、イギリスの情勢をフォローしてきました。しかし、情勢は予想以上に悪く好転の兆しが見えないことから、渡英を断念することにしました。その理由、先月までは「日本人が入国拒否される恐れがあるから」だったのですが、今はイギリス国内の問題になってしまいました。

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イギリスでは、今回のコロナウイルス問題が表面化する数年前から、医療崩壊に等しい状態に追い込まれています。2010年にキャメロン政権は緊縮財政に着手し、NHS(National Health Service、国民保健サービス)の予算も大幅に削られています。結果として、救急搬送された患者が4時間以上も放置される事例やロンドンでもベッド不足で入院患者を床に寝かせる事例が常態化するなど、本当にこれが先進国なのかと疑いたくなる有様。私も留学中にGP(General Practitioner、総合診療医)へ登録しに行った際は2時間以上待たされてうんざりしたものです(問診は3分)。ケンブリッジに住んでいた2002年はそんなこと無かったのに…。
NHSは、「ゆりかごから墓場まで」という有名なスローガンの下で設立され、イギリスが世界に誇る社会保障だったのですが、今やサッチャー政権下の暗黒時代に逆戻り。患者の負担はゼロでも、診察してもらえないようでは意味がありません。金持ちはプライベートに行けば良さそうに見えますが、こちらもパンク寸前の医院は多いのです。

イギリスの新型コロナウイルス感染者数も既に600人に達し、5月から6月にピークを迎えると予測されています。私は、NHSの惨状に鑑みてこれより早く終息するどころか、夏まで尾を引きずるのではないかと懸念しています。既に大陸では数百人規模が集まるイベントの禁止令が実施されており、イギリスでもこれに追随する可能性は高いですから、学位記授与式も中止になるのではないかと思っています。

仮に式典が中止にならないとしても、問題はまだあります。外出が規制されたり、そうでなくても商業施設等の営業時間が短縮されたりして、事実上の行動制限を受けるかもしれません。最も恐れているのが、日本の外務省がイギリスへの渡航制限を発令したり、帰国者を隔離して2週間の検疫を課したりすることです。これは何が何でも避けたいと思っています。

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更に、治安悪化も重大な懸念事項です。既にアジア人に対する人種差別は顕在化しており、先週はシンガポール人学生への襲撃事件が話題になりましたが、より規模の小さい嫌がらせは枚挙に暇がないようです。イギリス国内で感染が拡大した場合、ただでさえ緊縮財政で機能不全に陥っている警察や消防が活動を一層縮小する見込みと報道されています。

以上を考えると、今回の渡英は見送らざるを得ないとの結論に達しました。この状況でなお敢えて行く理由が見つからないのです。もちろん、5月までに特効薬が開発され脅威が去るなら別ですが、残念ながら見込みは薄いでしょう。
それにしても、こうして見ると日本は今のところヨーロッパ各国と比較しても随分マシだということが分かります。時折「日本は先進国ではない」と寝言を言う輩がおりますが、客観的に見てそんなことは全然ありませんね。

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なお、学位授与式に出られなかったとしても、学位記そのものは1ヶ月前に郵送されていますので、まあ文句を言ってはいけませんね。式典に出るついでに友人たちに会ったり、留学後に走り始めた新型電車を撮りに行ったり、家族みんなでかつての住まいを眺めたりしたかったのですが、これらは来年以降に回せば良い話ですから。

今回の新型コロナウイルスは、夏になっても勢力を弱めることなく拡大が続くという予測もあります。新型肺炎関連のニュースに触れるたびにストレスが溜まりますが、治療薬が開発されるか終息するまで何とか乗り切らなければなりません。現在留学中あるいはこれから留学する方々の心労は大変に大きいものかと推察しますが、どうかくじけることなく健康に注意して頑張って下さい…。

リハビリテーション

気づけばイギリスを去ってから早くも2週間が経過し、平穏無事(無味乾燥)な日常生活が戻ってまいりました。しかし、頭では分かっているつもりでも、未だ適応するのに苦労している事柄もあります。ということで、今日はプチ・カルチャーショックを幾つか。



【わるいこと】

<1. 信号機>

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イギリスでは、信号が赤だろうが青だろうが消灯していようが、車が来ていなければお構いなしに道を渡ります。人によっては来ていても渡ります。これは何もイギリスに限った話ではなく、大抵の国ではみんな信号を守りはしません。日本人以外で律義に青信号を待つのは、せいぜいドイツ人くらいではないでしょうか。

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しかし日本では、仮に全く車が来ないことが明らかな場合でさえ、基本的に青信号になるまで歩きません。大通りの脇にある小道ならまだしも、片側二車線の国道を渡った日には白い目で見られてしまいます。正直時間の無駄としか思えず、無言の同調圧力が息苦しく感じます。


<2. 現金社会>

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これは以前にも書きましたが、日本は未だ現金決済が主流。私がイギリスにいた頃はデビットカードによるコンタクトレス(非接触)決済ばかりを使っていたので、下手するとATMに行くのが月に1度でした。従って、定期的にお金を下ろしに行くのが非常に苦痛であります。

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日本では交通系ICカードをキャッシュレス決済のメインとして扱う傾向があるようですが、これには致命的な問題点が一つ。それは、既存のクレジットカードを使ってチャージ出来ないということです。ビューカードを使ったりオートチャージを設定したりすれば話は別ですが、今持っているカードが使えないのは非常に不便。結局ATMに行って野口先生を呼び出さなければなりません。こんなのキャッシュレスとは言えないと思います。

QRコード決済も使い始めましたが、コンタクトレス決済に慣れている身からすると、いちいちスマホのアプリを立ち上げることすら面倒くさい。デビットカードを軽くかざせばすぐに支払いが終わったあの日々が懐かしい…。


<3. 湿気>

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イギリスでもやたら暑い日が数日ありましたが、今は最高気温が15~20℃ほど。対して東京は今なお30℃前後。まだまだ暑い日が続いております。
私が帰国した頃は猛暑の盛りを過ぎており、最高気温が20℃台後半~30℃程度。数値だけ見れば、ロンドンと大きく違わなかったので、体調を崩すことはありませんでした。しかし、最低気温が20℃台前半と高く、湿度が70~85%の日々が続いたため、じわじわと体力を削られました。分かっちゃいたんだけど、体全体にまとわりつく水蒸気が鬱陶しくて仕方がない。カラッと気持ち良く晴れる日はいつ来るのでしょうか…。


【よいこと】

<4. 電車>

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「電車が時刻通りに走る」というのは実に素晴らしい。イギリスでは10分20分の遅延などザラで、運休や30分以上の大幅な遅延も毎日のように発生しています。また、発車3分前にならないと着発番線が表示されないのもかなりのストレスでした。ロンドンなどのターミナル駅では、数十人~100人以上の乗客が中央部分の電光掲示板を見上げ、ホームが確定すると民族大移動…という光景が数分おきに展開されています。

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日本では、基本的に「定刻」以外はあり得ないので、発車案内に到着見込みを示す欄はありません(JR西日本管内などは別にして)。乗換案内の示す通りに目的地へ到達出来るということの素晴らしさ、高い予測可能性がもたらず安心感…地味に見えても非常に大事なことです。


<5. バリアフリー>

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バリアフリーという点では(も)、日本より著しく遅れているイギリス。地下鉄の駅も階段が主流で、このような薄暗い・狭い・急と三拍子そろった螺旋階段も。エスカレーターやエレベーターがあっても、ホームのある高さまで届かないケースが多く、結局は階段を上り下りする羽目に。

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エスカレーターも故障や工事で使えないことがあり、こうなると完全にお手上げ。私は帰国の日、40kg弱の荷物を抱えて地下鉄に乗ろうとしたところ、下りエスカレーターが塞がれていて絶望しました。Northern線への迂回を試みるもしっかり階段があり、結局改札口からホームまで10分以上かかました。一度改札を入場したら出るわけにはいかないので、半泣きで荷物を運んだのでありました。
その点、日本ではエレベーターが普及しているので、大きな荷物を持ったままにっちもさっちも行かない…なんてことはまず起きません。アクセシビリティという点では、この国はかなり進んでいると思います。


<6. 大気汚染>

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日本の空気はとってもきれい。ロンドンではCongestion Charge(渋滞税)を年々引き上げて自動車の量を抑制しようとするものの、空気は全然良くなりません。都心部でも公園が多くて比較的マシな地域もある一方で、一部では北京より酷いと言われる始末。最近ではUltra Zero Emission Zoneなるものが導入されましたが、果たしてどうなることやら。

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地上の空気はもちろんのこと、地下鉄の車内も快適です。ロンドン地下鉄は、非冷房なのは仕方ないとしても、日本に比べると恐ろしく空気が悪く、30分乗ると鼻の中が真っ黒になるレベル。ま、日本と比べたら大抵の国が汚い方に分類されるでしょうけどね。


<7. 食べ物が豊富>

帰国翌日にスーパーへ行って驚いたのは、食材が非常に豊富なこと。久しぶりに日本のスーパーに足を踏み入れたところ、野菜も果物も魚介類も物がたくさんあり過ぎて、あまりの情報量の多さに頭が混乱したくらいです。自宅近くのスーパーを数軒見たところ、いずれも総菜もイギリスのどの店とも比べ物にならない豊富な品揃えで、そのすごさに圧倒されました。
乳製品やヨーロッパ産のハム類など一部を除き、どれも手頃な価格というのも嬉しい。平均収入が違うため単純な比較は出来ませんが、ロンドンの物価は大変に高かったので、どれを見ても「安い」「美味い」と感激してしまいました(笑)

…せっかく1年間体重を完全にキープしていたので、目方が増えないよう気を付けたいところです。こわいこわい。



こんなところでしょうか。他にも、治安が良い(ごく一部の例外を除き、どこに行っても夜間安心して道を歩ける)、Suicaの反応速度がオイスターカードより格段に早い、総菜などのパッケージを開けるのがとても楽、エスカレーターを歩かせてくれない等々、細かいところは色々ありますが、主なところはこんなものでしょう。
悪い点も幾つか挙げましたが、全体的に見れば日本の方が住み良いのは間違いありません。これは、私が日本で生まれ育ったということもありますが、やはり細かい心遣いが行き届いているのは間違いなく日本の方だと思います。イギリスも快適な国だとは思うものの、やはり自国が一番気楽に過ごせますね(笑)

留学生活の総括 前編

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早いもので、1年間の留学期間を終え、ついに帰国日が目前に迫ってきました。昨年8月30日に入国し、約2週間ケンブリッジに滞在した後ロンドンに移り、ドキドキしながら大学院に通い始めたのがつい昨日のことのように感じます。

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私は2002年から1年間、2005年に1カ月間イギリスに滞在しておりましたので、今回は3回目の渡英でした。過去2回はケンブリッジにおりましたが、ロンドンはとても近いので馴染みがありますし、この国自体昔住んでいただけあって適応は極めて容易でした。イギリスを留学先に決めた理由は、私の学びたい分野の研究が進んでいるからというのが最大の理由…でも、もう一度この国に行きたいという強い気持ちがあったのも事実です。

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異国の地で人生初の一人暮らし。食事は毎日自炊だし、日本人に会う機会も多くはありませんでしたが、さほど気にすることも無く順調に留学生活を送ることが出来ました。もちろん、細かいトラブルはつきもので、特に自室の隣にあるランドリーには悩まされました(故障が頻発し、漏水事故もあったくらいです)。


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大学院での勉強は決して楽ではありませんでしたが、まあ暫くすると人間というのは手の抜き方を覚えるものです。最初の数ヶ月は膨大な文献に押し潰されそうな日々が続きましたが、次第に取捨選択が出来るようになりました。

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ただ、大学院の授業及び指導体制についてはかなり不満もありました。詳細は長くなるので書きませんが、こともあろうに博士課程の院生に代講させる教員や(私が授業した方がまだマシなのでは?と言えるほど酷いものだった)、都心から遠く離れて騒音が酷い試験会場(エクセルロンドン)、面談回数及び期間が厳しく制限されている論文指導(6月上旬までに3回が限度)など、かなり頭に来たことも一度や二度ではありません。一応世界ランキングで日本の大学の追随を許さない位置にありながら、実際の教育の質は低くてガッカリしたほか、日本の大学院における研究指導が世界的にも決して劣っていないことを実感しました。

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とはいえ、最低でも英語力は身に付くと半ば楽観的、半ば諦めの境地で1年間頑張り、期末試験ではそこそこの点数を頂くことが出来ました。研究についても、帰国後に日本で発展させられそうなテーマを掴むことが出来たので、あながち無駄でもなかったと思っております。

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そして、イギリスは現在EU離脱で揺れています。年明け以来、保守党も労働党も国益及び国民の生活を全く顧みず、党利党略に明け暮れておりました。また、無能なテリーザ・メイに代わり、最近では悪名高いボリス・ジョンソン首相が独裁国家を思わせる強権的な手法を用いており、今後がどうなるかは一層不透明になっています。私の滞在中にEU離脱という壮大な社会実験を見ることが出来なくなったのは残念ですが、議会制民主主義発祥の国において、かつての大英帝国の落日を間近で観察する機会を得られたのは、大変貴重な経験だったと思います。


イギリス滞在中には、趣味も色々楽しむことが出来ました。鉄道趣味については別に紹介するとして、旅行と郵便ポスト撮影などを楽しむことが出来ました。

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旅行については、いかんせん学業の方が忙しくて泊りがけの旅行には2回しか行けませんでしたが、ロンドン近郊の小旅行はちょくちょく行くことが出来ました。第二の故郷・ケンブリッジには11回も足を伸ばしたほか、バースカンタベリーノリッチオックスフォードソールズベリーなど、ちょこちょこ出かけることが出来ました。この辺は、ケンブリッジからだと日帰りが厳しい距離にありますが、ロンドンからだと余裕でした。

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郵便ポスト撮影は、こちらに来てから目覚めた趣味です。ヴィクトリアからエリザベス2世に至るまで、6人の紋章を全てコンプリートしました。特に、大変稀少なエドワード8世のポストは全部で4本お目にかかることが出来ました。いつの日か、自分のホームページを作った暁には、たくさん写真を載せてみたいと思っています。

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また、古いロンドンバスの写真も何枚か撮ることが出来ました。ロンドンの代名詞的な存在のAECルートマスターがメインですが、それより更に古い動態保存車も見ることが出来ました。写真は、ルートマスターの更に先代にあたる、AECリージェントⅢ RTというバスで、1938年に登場しました。80年も前にこんなモダンなバスが走っていたとは、正直驚くばかりです。古いものを大事にする文化が、至る所で根付いているのがよく分かりますね(近代化が立ち遅れているとも言えますが…)。


こんな感じで、留学生活はなかなかに楽しいものでした。もっとも、「もっと長くこの国にいたい!」という気持ちはあまりなくて、「まあこんなものだろうな」程度の感慨しかありません。来たければまた戻ってこられると考えているのが大きな理由だと思います(笑)
鉄道趣味については、もう1本別に記事を起こします。

ウェールズ旅行

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9月2日から5日にかけてウェールズを旅行してきました。こちらの方には今まで行ったことがありませんでしたので、留学生活の終わりにぜひ足を運んでみたかった次第です。Cardiff→Llandudno→Conwy→Llanberisのルートでウェールズを縦断し、鉄道趣味も交えつつのんびり歩き回りました。ローカル線や閑散とした路線バスを乗り継ぐなどして、実にゆったりとした旅を楽しむことが出来ました。
写真はたくさん撮りましたが、全部載せるわけにもいきませんから、一部だけここに上げてみます。実際に見た時の感動をカメラでは再現できないのが惜しい。


【1日目 Cardiff】

Cardiffはロンドンから電車で2時間ほどの距離にあり、本数も毎時2本程度とアクセスしやすい都市。ここはまた来るチャンスがあるだろうと考え、宿から近い超有名どころを押さえるだけに留めておきました。

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Cardiff城。本丸だけ見るとちっぽけに見えますが、実際はなかなかに広い敷地で、城門・城壁・邸宅など見るべき場所は幾つもあり、見学を終えて出てきたときにはかなり時間が経っていました。第二次世界大戦では、他の大都市の城と同じく接収されたとのことで、当時のポスターや防空壕として使用された頃の展示物がありました。

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城に隣接する公園には、ストーンサークルがありました。ストーンサークルと言うと、Salisbury近郊の大規模なものが頭に思い浮かびますが、これはご覧の通り小さなものでした。おや?リスが写りこんでいますね。

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バスに乗ってLlandaff大聖堂へ。空襲により破壊された部分は1950年代に再建されたので、歴史の長さに反して内部はかなり近代的。正直、わざわざ足を運ぶほどではないというのが率直な感想です。

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ウェールズ議会。ウェールズに議会が設置されたのは、1998年にウェールズ政府法が制定された時のことで、地方分権から20年余りが経ちました。建物自体はそれより100年余り前に建てられ、当初は港湾会社のオフィスでした。現在はウェールズ議会の歴史を紹介する小さな博物館となっています。

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Cardiffで泊まったのは、イギリスではお馴染みのB&B (Bed and Breakfast)でした。夏休み明けでシーズンオフということもあり、私以外にはロシア人の老夫婦が1組泊まっているだけで、大変快適に過ごせました。


【2日目 Llandudno】

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日本でもそうですが、都心⇔地方都市のアクセスは比較的良好なものの、地方都市間の移動は距離の割に時間がかかることが多いです。CardiffからLlandudnoまでは約300キロ、3本の列車を乗り継いで4時間半かかりました。2日目と3日目はLlandudnoに泊まりました。ここはウェールズ北部のリゾート地。海と山が一遍に楽しめるということで、19世紀後半から観光客に人気の場所となりました。もっとも、町行く観光客に話を聞いたところ、ほとんどがイギリス人で外国人はほとんどいませんでした。

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Great Orme岬へ通じる路面電車。1902年の開業当時からずっと同じ車両が使われており、20%もの急勾配を20分間隔で行き来しています。この写真が今回の旅行のベストショットかな~。

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Great Orme岬は標高約200メートルの山。この日は風がものすごく強くて歩くのに難儀しました。なお、ウェールズは羊で有名な土地…人間より数が多いのではないかと思うほどたくさんの羊を見ました。


【3日目 Conwy】

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ConwyはLlandudnoからバスで20分弱。この地域の行政の中心地でもありますが、Llandudnoより更に規模は小さく感じられました。ロンドンからのアクセスは悪いにもかかわらず、意外に日本人観光客が多い町です。

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この町の最大の名所は、世界遺産に登録されているコンウィ城。1280年代に建造された古い城で、映画「天空の城ラピュタ」のモデルになったとも言われています。近年、姫路城と「姉妹城」提携がなされたと話題になりました。

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思ったよりも大きな城で、しかも上下の移動もかなりあり、相当に広く感じました。塔がいくつも残っており、それぞれてっぺんまで螺旋階段で上がることが出来ます。ただし、塔内は照明が一切無く、塔の上にも簡単な手すりがあるだけでしたので、強風の日に上がるとかなりの恐怖を感じます。眼鏡が危うく飛ばされるところでした(笑)

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Yorkほどではありませんが、城壁を歩くことが出来ます。Yorkに比べると原型に近そうな雰囲気でした。入口の階段がなかなか見つけられず、ちょっと迷いました…もう少し町内に案内板を増やしてほしい。

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これは「イギリスで一番小さい家」らしい。2階建てで総面積約5坪。1階は玄関、2階はベッドを置くのがやっとという狭さで、漁師が住んでいたそうな。ま、日本だったらこれよりも小さな家がありそうなものですが(笑)


【4日目 Llanberis】

最終日はローカル線と路線バスを再び乗り継いでLlanberisへ。この小さな村を走る、2つの観光鉄道に乗りに行きました。なお、この村があるGwynedd地方は、ウェールズ語の話者が特に多い地域で(人口の3分の2以上)、地元の人たちの会話は何一つ聞き取れませんでした。もっとも、私に対しては綺麗な英語で話すので、特に問題は生じませんでした。

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まずはLlanberis Lake Railway。歩くのと大差ない速度で、湖畔沿いにゆっくりと走るナローゲージ鉄道。1971年に開業した新しい路線ですが、蒸気機関車はかなり古いものを使っており、写真のものは1922年製だそうな。

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続いては有名なSnowdon Mountain Railwayに乗車。1896年に開業した登山鉄道で、ディーゼル機関車又は開業当時からの蒸気機関車が客車を押し上げるのですが、今回は時間の都合でディーゼルの方を選びました。最高速度は時速8キロで、7.5キロ余りを1時間かけて上り下り。

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晴れたらさぞ綺麗な景色が広がるのだろうと思いますが、残念ながら山頂は思いっきり深い霧の中。3メートル先の看板が読めないほどの濃霧でしたので、30分の停車時間のうち半分ほどしか外に出られませんでした。まあ山の上というのはどこもそんなものですよね。

帰りはLlanberisからBangorまで1時間ほど貸切状態の路線バスに乗り、Creweで乗り換えてロンドンに帰りました。Creweでは予定より1本早い電車に間に合ったので、予定より1時間ほど早く帰宅。ちなみに、私の乗るはずだった列車は最終的に70分遅れて午前1時前にEustonに着きましたので、本当に危機一髪のところでした。


ウェールズは、スコットランドとはまた違った文化圏で、町中の看板や道路標識など至る所でウェールズ語が使われており、イギリスながらあたかも違う国に来たかのようでした。もっとも、ウェールズの人はきちんと英語を喋りますし、私の顔を見てウェールズ語を解すると期待する人など誰もいるはずがありません。コミュニケーションをとるのに困ることは全くありませんでした。
ウェールズの旅行は、車が無いと移動が制限されますが、公共交通機関を駆使しても意外に楽しむことが出来ます。昔と違って、今はGoogleマップで路線バスの時刻表まで全て出てきますから、本当に楽になりました。留学生活の終盤、本当に良い思い出が出来ました。


ところで、Cardiffを中心にしてウェールズを走るナショナルレールも撮ってきましたので、その写真は次回載せたいと思います。

Huntongdonへ

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この間の土曜日はHuntingdonへ行ってきました。ここはロンドンから北に普通列車で1時間余りの場所にあり、少し寂れた雰囲気のある町。歴史は古いものの、特に面白い物があるわけではなく、観光客は殆んどいないような町です。

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そんな町をわざわざ訪れた理由は、この公園を見たかったから。17年前Cambridgeに住んでいた時、この公園には何度か来たことがありました。当時9歳の私は、何故かある1本の木を妙に気に入ってしまい、抱き付いてなかなか離れなかった思い出があります。これを帰国前にもう一度見ておきたかったのです。

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前々から足を運びたいと思っていたのですが、公園の名前が分からず行くに行けなかったのです。しかし、先日外付けHDDの写真を眺めていたところ、母親が撮影場所を記録に残しておいてくれたことに気づき、特定に至りました。

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公園は何となく裏磐梯や奥日光に似た雰囲気だと感じました。写真では私以外に誰もいないように見えますが、実は地元の家族連れがピクニックをしていて、子供たちが周囲を駆け回っておりました。

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一歩公園の中に入ってしまえば、当時の記憶はどんどん蘇るもので、例の木はすぐに見つけ出すことが出来ました。あの頃の私は、いつかこの木が切られてしまうのではないかと勝手に悲しみに浸っておりましたが、あれから20年近くが経った今日も元気にこの場所に立っておりました。

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幹に登って一休み。1.5メ-トルくらいの高さがあり、今の私でも上がるのには少々苦労しました。イギリスには今後も来るチャンスがあると確信していますが、この場所に来る機会があるかというと微妙なところですから、帰国前に来られて良かったです。

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帰りの電車までしばらく時間があったので、town centreをざっと見物。人口2万人余りなので小規模なのは予想していましたが、店の並びを見る限り、あまり所得が高くない地域という印象を受けました。具体的な店名に触れることは控えますが、ロンドンだと郊外の中でも低所得者の多い地区でよく見られるチェーン店が複数ありました。きっと、大抵の人は車で少し離れた店で買い物するのでしょう。

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帰りがけに途中駅で降りて、3枚ほど鉄道写真も撮影して帰宅しました。

とりあえずこれで再訪したい場所は一通り見ることが出来ました。帰国まであと3週間弱!
プロフィール

KHKQ

Author:KHKQ
横浜→東京→多摩→倫敦
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